#10 HAND UV FADE PARKA ― 光と手で仕上げる、SUBCULTUREの新しい実験 ―
服を“作る”というより、時間と自然の産物を“使う”。
今回のプロジェクトは、SUBCULTUREが新しく取り組んだ<フェード実験>に端を発しスタートした。



―太陽光を使った特殊UV加工
サン・フェードというワードをビンテージに興味のある方々ならどこかで耳にしたことがあるハズだ。近年、高い人気を誇るフェードものは本来経年で生まれる褪色した状態を指すことが多い。このサン・フェードの考え方を活用し、ヴィンテージに肉薄する表情を作ることを主眼にしているのが本実験。

3か月間、日中の限られた時間だけ外気に触れさせていく。自然の太陽光のみ、それこそUVフェードにすべてを託した、クオリティコントールの困難な加工手法と言える。人工的な薬剤や熱を一切使わず、太陽光の波長のみで少しずつ褪色させていく。
風の通り方、気温、湿度etc.、日ごとの環境要因が生地に刻みこまれていくため、同じ工程でも二つとして同じ色味・表情にはならない。且つ、限られた数量しか生産もできず、すべてが異なる1点物。言わば、“自然がデザインした、唯一無二のグラデーション”なのだ。
しかも今回は、19枚のみの作成。大袈裟ではなく、本製品は、時間の経過そのものを“着る”という感覚にほど近いと言えるかもしれない。

―フリーハンドで描く、ハンドル刺繍
本実験、もうひとつの見どころは、パンチ(※1)も型も使わず、完全なフリーハンドで刺繍されたグラフィックにある。
職人がミシンのハンドルを操り、ペンで線を描くように針を走らせていく。糸の流れや針圧、スピード。そのわずかなズレが、“個性”という名の揺らぎを生む。求めたのは、緻密さではなく、職人が持つ感覚とリズムが生む“自然の美”。SUBCULTUREが考えるクラフトマンシップは、“完璧ではない手仕事”の中に宿る温度にこそある。


※1:通常、刺繍を製品に施す場合、パンチと呼ばれる刺繍試打ち(サンプル)を作成する。本製品は刺繍サンプルを使用せず、職人の手の感覚で作成する高難易度の手法。
―時間と手の共作
このパーカは、スタジオで機械的にデザインされたものではない。
太陽と風のエネルギーを吸収し、熟練の職人が持つフリーハンドがクロスオーバーする中で、徐々に表情を変えながら完成を迎えたものだ。
同じものは、二つとして作れない。
それでも確かに言えるのは、この一枚には「時の流れ」と「手の温もり」が融合した作品であると言うこと。

―不均一な完成品が、もの作りの概念を覆す
ヴィンテージに魅了される大きな理由の一つに、時の経過が生んだ唯一無二のプロダクトの表情にある。この概念をSubcultureなりに解釈し、自然の力と職人の力の両面で肉薄できないかを模索し行き着いたのが本製品。単にヴィンテージ的な表情演出をするだけであれば、人工的な手法をとる方が効率は良い。しかし、それがリアルか、と問われると疑問が残った。そこで、効率とは真逆の考えを採用し、実験的な側面もありながらモノ作りを実現させた。当然ながら、プロダクトの表情には個体差が生まれる。今回で言えば、19枚のフーディはすべて褪色のムードが異なっている。
しかし、この“個体差”=“クオリティの不均一さ”こそが、ヴィンテージを深く愛する人たちにとって堪らないポイントになるとともに、Subcultureにとってモノ作りのネクストフェーズになると確信している。

