【#19】SAKAI TAKAYUKI × SUBCULTURE — 刃と革。異なる文化が重なる瞬間。

大阪・堺。600年以上の長きに渡り技術と伝統を継承し続ける刃物の産地に足を運んだ日、工場に流れていたのは機械音ではなく“手仕事のリズム”だった。


鋼を叩く音。火の匂い。研ぎ澄まされる刃先。

その空間にあったのは、ファッションとは異なる、しかし自分のモノ作りの概念と確実に通じ合う“職人の美学”が存在した。


■ ダマスカスという“層”
今回、ブランドとしては初となる伝統的な刃物とのコラボレーション。互いがイメージするゴールの形、イメージの源泉を研鑽しながら製作された包丁は、美しいダマスカス模様をまとった一本に仕上がった。

幾重にも重なる鋼の層は、単なる装飾ではなく、強度と切れ味を生み出すための構造。その強靭とも言える刃腹に、SC Subcultureを象徴する“フェザーモチーフ”が刻みこまれている。


自分がイメージする羽根=フェザーは、軽やかさの象徴ではない。幾重にも重なり合う羽根は層となることで力強さが宿る、枚数を削ぎ落とすことで鋭敏な動きを可能とする。この自分なりの解釈を、鍛えられた刃に静かに刻み込んでもらった。
■ レザーケースはディアスキンで 互いのアイデンティティを内包した包丁を収めるのは、SC Subcultureが製作したフルレザーの包丁用ケ ース。素材には、<藤岡 勇吉>が手掛けるディアスキン(鹿革)を採用。質感はしなやかでありながら、 肉の厚みが程よく、使い込むことで徐々に深みを増していく。

一点一点手作業で仕上げられるその表情は 、刃物と同じく“個体差”が生じていく。

また、リベットにはシルバー925を、コンチョも同じくシルバ ー925を採用した。

刃物という“日本の道具”に、レザーとシルバーという“経年変化を生む異素材”を重ね合 わせる。強いて言うならば、異文化の衝突ではなく、静かな融合に他ならない。
■ デニムエプロンというワークウェア さらに今回、SC Subcultureオリジナルデニム生地を使用してエプロンも作成した。1950年代から60年代 にかけて存在したワークエプロンのディテールをベースに、セルビッチデニムを贅沢に使用し、デザイン 的にも再構築を果たした。

デニム本来の役割を全うすべく、無骨さを宿しながら、日々使い込むことで表 情を変えていくのもポイントだ。刃を扱う現場において、単なる作業着ではなく“育てる道具”として成立 するように一から設計した一着。刃を扱う手、革を縫う手。どちらも“人間の手”が生み出すことに変わり はない。
■ 限定本数という意味 今回のプロジェクトは限定本数のみの生産となる。つまり容易に量産はできない、という事だ。一本の包 丁に複数の職人が関わり、丁寧に仕上げていく。こうして作られた1本1本の包丁を収めるためのレザー ケースを仕立てていく。手間暇を惜しまない、手仕事が生み出す道具。故に、持つ人の人生に長く寄り添 ってくれるのだ。
■ 伊勢丹新宿という舞台 2026年4月、伊勢丹新宿店にて本製品を披露するためのPOP-UPを実施する。百貨店という場所は、伝統 と革新が交差する舞台。600年の歴史に裏付けられた堺の街だからこその刃物と、若輩ながら業界の中で 確かな存在感を発揮するSC Subcultureのディアスキン。一見すると相まみえることの無いハズの存在であ る両者が、伊勢丹という場で静かに肩を並べる。この事実は、何にも変え難い説得力に満ちていると言っ ていいだろう。
■ 道具を“文化”として持つということ 包丁はプロの料理人だけが使用を許されたものではない。一面で見れば誰もが使うことのできる、“生活に 根ざした道具”であり、職人文化が生んだ伝統技術の結晶でもある。今回のコラボレーションは、単なる ブランド同士の企画に留まらない。 刃と革。鋼と銀。日本とアメリカ。互いのモノ作りの根底に流れる異文化同士が見事に重なり合った一本 。それを手にすることは、“モノを所有する”のではなく、“モノに刻み込まれたバックボーンを背負う”こ とと同義かもしれない。

